認知症の原因と症状とその対応策
認知症の原因になる病気
1 神経変性疾患
アルツハイマー病、レビー小体型、ピック病、パーキンソン病、ハンチントン病、
進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症など
2 脳血管障害
脳梗塞(塞栓または血栓)脳出血など
3 頭部外傷
脳挫傷、脳内出血、慢性硬膜下血種など
4 悪性腫瘍
脳腫瘍(原発性、転移性)、がん性髄膜炎など
5 感染症
髄膜炎、脳炎、進行麻痺、クロイツフェルト・ヤコブ病など
6 代謝栄養障害
ウエルニッケ脳症、ペラグラ脳症、ビタミンB12欠乏症、肝性脳症、電解質異常、脱水
など
7 内分泌疾患
甲状腺機能低下症、副甲状性機能亢進症、副腎皮質機能低下症など
8 中毒症状
アルコール、薬物(向精神薬、ステロイドホルモン、抗がん剤など)一酸化炭素中毒、
金属中毒(アルミニュウム、水銀、鉛など)
9 その他
正常圧水頭症、低酸素脳症など
認知症の症状
中核症状と周辺症状がある
Ⅰ中核症状
· 記憶障害 物忘れ
· 高次脳機能障害(失行・失認・失語)
· 判断力障害 物事を思考するスピードが遅くなる
· 見当識障害 時間場所人物を認識するのが難しくなる
· 実力機能障害 普段当たり前にしていた行動の段取りができない
Ⅱ周辺症状 BPSD
· 行動症状 暴言暴力 徘徊 睡眠障害 異食 失禁失便
· 心理症状 妄想幻覚 不安焦燥 抑うつ 介護抵抗
加齢によるもの
画像診断などで病的な認知症を特定でき、治療できるものもある。しかし、私の経験からは80歳を過ぎると誰もが認知機能の低下は避けられないようである。短期記憶の障害から始まる。最近経験した症例では、自分は元気で、日常生活は自分で十分できるので、リハビリはいらないと言うが、変形性膝関節症が高度で歩行不安定なのにそれを指摘しても、私は自転車に乗って畑仕事に行くと言い張る。「息子が今日会いに来て、すぐ迎えに来ると言われている。」と言ったので、3分後、「今日、ご長男さんは来られましたか?」と聞き直すと、「今日は息子と会っていない。」と答える。このような、御老人とお話するのはとても楽しいことなのだが、認知症そのものを解明したり、完治しないまでも日常生活自立させることは現段階では不可能で、介護施設への移行が不可欠になる。
Ⅲ 対応策
長谷川式認知症スケールは批判も多いが、臨床では現段階で最も信頼できる検査の一つである。確かに、急に今日は何日と聞かれても答えられない時もあるが、健常人は、正確でなくても大体の日にちを答えて正確にはわからないと答えるが、認知症患者に聞くと、うろたえて笑いでごまかそうとしたり、全然わからなく、今が平成であるかどうかも答えられない。これが大きいな特徴で、長谷川式認知症スケールにより、知能レベルの低下により日常生活の自立がどれくらい困難かある程度推測できる。それにより運動機能の機能訓練の指示がどれくらい入力できるかを予測でき、どのように指導すれば機能訓練が効果的に進めることができるかを判断する手掛かりになる。
Ⅳ 認知症の特徴とその対応
短期記憶が障害され、長期記憶は比較的保たれる。医師などの社会的地位の高い人に対してはとても従順で、それに対し病棟スタッフ、看護師、ヘルパーさんなど、自分の生活の手助けをする人たちには症状が強く出て、周辺症状(徘徊、暴言、危険行為など)で悩ますことが特徴である。
対応としては自分の非を認めないので、子供を叱るような対応をするとかえって症状を悪化させる。間違った行為をしても「こんなことがあったね。不思議だね。ご自身のお身体が大事なのでケガなどはしないようにしてくださいね。」など、間違いを正面から否定せず、自分からこの方法の方が良いと無意識に気付かせることが重要である。
★認知症のじょうずな対応の仕方
1 規則正しい生活リズムをつくる
2 できるだけ笑顔で会話してコミュニケーションをとる
3 簡単な家事などできることはやってもらう
4 失敗を責めたり、しかったりしない
5 本人の言葉を否定しないで「そうだったの」と受け入れてあげる
6 新しいことは苦手なのでできるだけさけるようにする
7 過去の記憶の中で生きていることを理解してあげる
8 こだわっていることや、やりたがっていることはやらせてあげる
9 介護保険など認知症の介護に使える制度は活用する
Ⅴ 主な薬 参考文献 介護者のための病気と薬がわかる本 雲母書房
1 認知機能障害改善薬 アリセプト
注意点
服用開始時に吐き気、食欲不振などの消化器症状が現れることがある。
長期難服薬を中断するとその後再開しても効き目がない。
副作用
失神、徐脈、消化性潰瘍、パーキンソン様症状、血圧の変動、急な発熱、発汗
2 脳循環改善薬 サアミオン、シンメトレル、ケタス、セロクラール
脳血管性の場合には、脳の神経伝達機能改善薬を用いて脳血流を増加させ、意欲低下を改善する。
副作用
消化器症状、動悸、めまい
3 行動改善薬
· 幻覚、妄想、興奮などに用いる薬 リスパダール、ジプレキサ、グラマリール、
セロクエル、ルーラン
統合失調症改善薬の抗精神薬や抗うつ薬などを使用するため認知機能を低下させる恐れがある。ジプレキサ、セロクエルは糖尿病には禁忌である。
副作用
立ち眩み、めまい、手足の震え、口が乾く、頻尿、腹痛、体重の急変
· 抑うつ、意欲低下に用いる薬 ルボックス、パキシル、トレドミン、サインバルタ
脳血管性の場合には、脳の神経伝達機能改善薬を用いて脳血流を増加させ、意欲低下を改善する。
副作用
錯乱、痙攣、頻脈、急な発熱、筋肉がこわ張る、ふらつく
4 不眠、不穏に用いる薬 テトラミド、レンドルミン、マイスリー
緑内障には禁忌、飲酒を禁じる
副作用
血圧の変動、頻脈、急な発熱、筋肉がこわ張る、ふらつく
高次脳機能障害の現場でのADL訓練
高次脳機能障害とは(ウイキペディアより)
主に脳の損傷によって起こされる様々な神経心理学的障害である。主として病理学的な観点よりも厚生労働省による行政上の疾患区分[1][2]として導入された概念であり、異なった原因による複数の疾患が含まれる。それぞれの症状や治療について、詳しくは脳血管障害といった病理学的な観点から論じられる。
感覚と認知のプロセス(高次脳機能障害ナーシングガイド 日総研より)
認知機能というのは、知覚や言語、行為、思考といった基本的な能力を用いたり、それらを統合する働きを意味する。つまり、人、物、時間、場所、事象の意味を理解していく過程の総称である。
認知リハビリテーションは、注意、言語、記憶、推理、問題解決、遂行などにおける障害のアプローチである

感覚と認知のプロセスー1
高次脳機能障害ではこの一連が十分に機能しないことで、対処行動は困難となり、時間がかかったり、自己流になったり、混乱、回避などの行動パターンを取る。(上の図の「学習・会見による知識」は「学習・経験による知識」の誤りでした。申し訳ありません。)
認知のプロセスー2
注意力障害や運動機能維持困難などがある場合には、注意の集中が持続せずに、課題遂行が困難となり学習効果は低い。そのため、記憶情報に頼るのではなく、視覚的にキャッチできるような工夫や短期集中での学習プログラムを組む必要がある。
認知のプロセスー3
事象を理解し行動していくためには、時空間の認知と言語活動が必要である。失語症の症状である話す、聞く、読む、理解する等の言語機能の障害や右大脳半球損傷後のコミュニケーション能力の障害によって時間日時の観念がわからなくなり対処行動は困難となる。
私たちが日ごろ意識的・無意識的に行っている行為プロセスについて細分化してみる。高次脳機能障害があることで、いずれかのプロセスが中断・遅延・混乱・省略され、結果として行為遂行が成立しなくなる。
行為プロセス
(1)時間の認知 日付・曜日・時間⇒行動の出現
(2)場所・物の認知
(3)言葉の認知
(4)人の認知
(5)手順の組み立て・プログラム
(6)動作機能
(7)プログラムの記憶想起
(8)注意力・集中力
(9)結果の点検・検証
高次脳機能障害の動作障害は失行失認が原因のことが多い。
一般的な動作障害の原因として
痛み 関節拘縮 骨折 骨髄炎 悪性腫瘍
筋力低下(脊髄~末梢神経障害 廃用症候群)
協調性障害 不随意運動
痙性麻痺 固縮
失行失認 があげられる。脳障害の動作障害の全てが失行失認が原因ではない。
脳の障害(運動療法 第三版 第七章 脳卒中の運動療法 医歯薬出版株式会社より)
意識状態障害(覚醒状態)
意識内容障害(精神障害、知能障害、失行、失認、
失語、構音障害)
感覚障害(脱失、鈍麻、しびれ)
運動障害(麻痺、不随意運動)
排泄障害(排泄失行、排泄失認)
痛み(視床痛)
成長障害
意識とは(自身と周囲の認識)
1 意識の状態(覚醒の状態)
脳幹網様体の機能
2 意識の内容
大脳皮質の機能
脳卒中急性期の意識の内容障害
1 反応 無反応又は遅延
2 知能障害 記銘力障害 学習障害
3 精神障害
4 失語
5 両側性障害 両側性痛覚障害
健側の使用障害(両側性失認 両側性失行)
寝返り、起き上がり不能 座位、立位不安定
6 口顔面失行失認
嚥下障害(嚥下失行失認)発声障害、構音障害
7 排泄障害 排泄失認、排泄失行
8 注意力障害
9 易疲労性
失行失認と運動機能
観念運動失行 自発的には容易に遂行できる運動活動を言語刺激で(口頭命令)できない状態
3亜型
①口顔面筋の運動に関するもの(の大部分)
②体肢の運動に関するもの
③全身の運動(起立、歩行など)に関するもの(の一部)
歩行失行・小股すり足歩行 足を床から離すのが困難
失認における運動障害 運動のコントロール困難
口顔面失行 発声失行、嚥下失行
口顔面失認 構音障害、嚥下失認
排泄失行 排泄失認
脳卒中の運動および動作
1 失行タイプの特徴 観念運動失行
意識すれば運動動作不能 動作の開始が困難
2 失認タイプの特徴 身体失認(深部覚)
運動のコントロール困難
3 脳卒中一般 失行失認の両障害を合併
努力すれば共同運動が発生
一連の動作の分断は不可
ADL訓練は現場で
脳の障害による動作障害の対応
できない動作を意識させない(苦手を意識させて治そうとしない)
頑張れと言わない 動作を分断して訓練しない
やり方を指示せず目的を指示する(立ち上がれと言えばできないが、このベットに寝るように言うと立ち上がって寝る)
出来るだけ病前動作に近づける 習慣動作を邪魔しない
出来ない動作は必要最小限で介助する
動作開始が困難なので最初を助ければ後はうまくいくことが多い
脳の障害
-
意識状態障害(覚醒状態)
-
意識内容障害(精神障害、知能障害、失行、失認、失語、構音障害)
-
感覚障害(脱失、鈍麻、しびれ)
-
運動障害(麻痺、不随意運動)
-
排泄障害(排泄失行、排泄失認)
-
痛み(視床痛)
-
成長障害
我々は疾患別に考える習慣ができているので脳が障害されたときにどのようなことが起こるかという考え方に慣れていません。ほとんどの介護の教科書が疾患別に記載されているからです。
アルツハイマー、ピック病、脳血管性認知症、頭部外傷などいかなる疾患でも、それを司る脳の部位が損傷されれば問題行動BPSDと同じような症状が起きます。
Ⅰ 認知症とは
これまでに獲得してきた知的機能の低下により、周囲の状況把握や判断能力が低下し、自立した生活が困難になった状態を指す。物忘れに始まり、次第に判断能力が低下し、周囲が困ることが多くなる。見守りや、様々な援助が必要になり「生活障害」とも言うべき状態になっていく。
Ⅱ 認知症の分類
1 治療困難なもの アルツハイマー型、脳血管性認知症、レビー小体型認知症
2 治療が比較的容易なもの 慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、うつ病
中核症状と周辺症状があげられます。
Ⅰ中核症状
-
記憶障害 物忘れ
-
高次脳機能障害(失行・失認・失語)
-
判断力障害 物事を思考するスピードが遅くなる
-
見当識障害 時間場所人物を認識するのが難しくなる
-
実力機能障害 普段当たり前にしていた行動の段取りができない
Ⅱ周辺症状 BPSD
-
行動症状 暴言暴力 徘徊 睡眠障害 異食 失禁失便
-
心理症状 妄想幻覚 不安焦燥 抑うつ 介護抵抗
3加齢によるもの
画像診断などで病的な認知症を特定でき、治療できるものもある。しかし、私の経験からは80歳を過ぎると誰もが認知機能の低下は避けられないようである。短期記憶の障害から始まる。最近経験した症例では、自分は元気で、日常生活は自分で十分できるので、リハビリはいらないと言うが、変形性膝関節症が高度で歩行不安定なのにそれを指摘しても、私は自転車に乗って畑仕事に行くと言い張る。「息子が今日会いに来て、すぐ迎えに来ると言われている。」と言ったので、3分後、「今日、ご長男さんは来られましたか?」と聞き直すと、「今日は息子と会っていない。」と答える。このような、御老人とお話するのはとても楽しいことなのだが、認知症そのものを解明したり、完治しないまでも日常生活自立させることは現段階では不可能で、介護施設への移行が不可欠になる。
Ⅲ 対応策
長谷川式認知症スケールは批判も多いが、臨床では現段階で最も信頼できる検査の一つである。確かに、急に今日は何日と聞かれても答えられない時もあるが、健常人は、正確でなくても大体の日にちを答えて正確にはわからないと答えるが、認知症患者に聞くと、うろたえて笑いでごまかそうとしたり、全然わからなく、今が平成であるかどうかも答えられない。これが大きいな特徴で、長谷川式認知症スケールにより、知能レベルの低下により日常生活の自立がどれくらい困難かある程度推測できる。それにより運動機能の機能訓練の指示がどれくらい入力できるかを予測でき、どのように指導すれば機能訓練が効果的に進めることができるかを判断する手掛かりになる。
Ⅳ 認知症の特徴とその対応
短期記憶が障害され、長期記憶は比較的保たれる。医師などの社会的地位の高い人に対してはとても従順で、それに対し病棟スタッフ、看護師、ヘルパーさんなど、自分の生活の手助けをする人たちには症状が強く出て、周辺症状(徘徊、暴言、危険行為など)で悩ますことが特徴である。
対応としては自分の非を認めないので、子供を叱るような対応をするとかえって症状を悪化させる。間違った行為をしても「こんなことがあったね。不思議だね。ご自身のお身体が大事なのでケガなどはしないようにしてくださいね。」など、間違いを正面から否定せず、自分からこの方法の方が良いと無意識に気付かせることが重要である。
Ⅴ 主な薬 参考文献 介護者のための病気と薬がわかる本 雲母書房
1 認知機能障害改善薬 アリセプト
注意点
服用開始時に吐き気、食欲不振などの消化器症状が現れることがある。
長期難服薬を中断するとその後再開しても効き目がない。
副作用
失神、徐脈、消化性潰瘍、パーキンソン様症状、血圧の変動、急な発熱、発汗
2 脳循環改善薬 サアミオン、シンメトレル、ケタス、セロクラール
脳血管性の場合には、脳の神経伝達機能改善薬を用いて脳血流を増加させ、意欲低下を改善する。
副作用
消化器症状、動悸、めまい
3 行動改善薬
-
幻覚、妄想、興奮などに用いる薬 リスパダール、ジプレキサ、グラマリール、
セロクエル、ルーラン
統合失調症改善薬の抗精神薬や抗うつ薬などを使用するため認知機能を低下させる恐れがある。ジプレキサ、セロクエルは糖尿病には禁忌である。
副作用
立ち眩み、めまい、手足の震え、口が乾く、頻尿、腹痛、体重の急変
-
抑うつ、意欲低下に用いる薬 ルボックス、パキシル、トレドミン、サインバルタ
脳血管性の場合には、脳の神経伝達機能改善薬を用いて脳血流を増加させ、意欲低下を改善する。
副作用
錯乱、痙攣、頻脈、急な発熱、筋肉がこわ張る、ふらつく
4 不眠、不穏に用いる薬 テトラミド、レンドルミン、マイスリー
緑内障には禁忌、飲酒を禁じる
副作用
血圧の変動、頻脈、急な発熱、筋肉がこわ張る、ふらつく
Ⅵ 私の個人的意見
私の個人的な経験からなのですが、明確な原因のない認知症のお年寄りと話していると、考えることがとても苦手です。あるお年寄りに、「考えてる?」と聞くと、「考えてない。」とあっさり言われました。その人に、一日10分ぐらい、会話で簡単な質問をします。例えば「今日は何月何日ですか。」とか、「考える習慣をつけるため。」ということを、ご本人に受け入れやすい言葉で説明し行った結果、1週間くらいで日にちの感覚が戻ってきました。
どのくらいの認知症なのか把握することがとても重要です。ご本人が受け入れやすいように、長谷川式などを行うと馬鹿にされているように捉えるお年寄りもいて、自尊心を傷つけないように行うのがこつです。考えることがとても楽しく、大事なことだとわかりやすく受け入れてもらうような工夫が必要です。
簡単な会話で認知症の患者さんの好きなことなどを引き出せればしめたものです。
身近にこのような方がいらっしゃったら是非試してみてください。
認知症そのものを改善させる方法はないか考えています。
思いつきなのですが、認知症患者さんの知的能力で最後まで保たれているのが昔苦労したころの記憶です。男の人なら、仕事のこと、女の人だったら家事、子育てなどの記憶です。
この話題から入って、他の知的能力、時間、場所などの認知機能、長期、短期記憶などが改善できないか考えてます。
認知症そのものの改善ができれば、介護の負担を大きく軽減できるのではないかと思います。
単なる思い付きの段階で科学的根拠もないのですが、皆さんは利用者さんと接していてどのようにお感じになるでしょうか。現場の方のご意見をお聞かせください。
長谷川式認知症スケールは一見簡単なのですが、試していって質問するタイミング、認知症の方の反応を捉えることに慣れないとその意味が理解できません。
しかし、分かってくると人間の思考というものがどのようなものか、時間、場所、長期、短期記憶、計算能力などの認知機能をひっくるめて人の認知機能が成り立っています。...
認知症の人は上記の部分のどれかが欠落しています。
色々な人に根気強く試してみてください。
医師は患者さんを診察し診断基準に基づいて診断していきます。
認知機能障害に失語、失行、失認とありますが、臨床的に見て
記憶障害と失見当識、計算能力など、のみが起こり失語、失行、失認を伴わない場合もあります。
認知症が重度になると、上記の症状のどれが起こっているのか判断ができなくなります。
分類には、脳血管障害、アルツハイマー病など様々に分類されています。
脳血管障害などは原因がはっきりしていますが、原因不明のものがたくさんあり、
専門家によって意見が対立することもしばしばです。
医療福祉施設では様々な試みがなされていますが、現在でも試行錯誤が続けられています。
高次脳機能障害は介護状態になる一番の問題と私は思っています。
高次脳機能障害とは
非常に広い概念で頭部外傷(脳内のけが)、脳卒中、認知症などに起こる。記憶障害、行動障害などを指します。
介護が必要になるのはこれが一番の原因ではないかと私は考えています。
失行 失認
行動障害と言ってしまっていいのかわかりませんが。運動機能が全般に障害されます。
失行失認の説明はかなり難しいです。成書を読んで、実際の患者さんを観て初めて分かります。歩行障害では単なる筋力低下と違い、失行失認は運動のコントロールができないので、
バランスを崩します。しかしバランスを崩したということを自分では認識できないのです。「今倒れそうになりましたよ。」と注意しても本人は何を言われているのかわからないようです。
これが認知症と重なると、どこからが認知症でどこからが失行失認なのか
判断するのが困難になります。
これに言語障害、嚥下障害、排尿、排便障害などを伴うこともあります。このような人は多様な症状を示すので、ステレオタイプの対応は無効となります。どの症状が出ているか、よく観察し臨機応変に対応するしかありません。介護をしていて、もっとも難しい症状と思います。昔、私が担当した患者さんで、平行棒で歩かせると、足だけ前に行ってしまい、体をそりかえった様に歩いてしまう患者さんがいました。その人に、矯正用鏡を見てもらい、姿勢の矯正をしました。
ご本人の姿勢感覚と、実際の姿勢のずれがありました。このような人は身体失認があると言ってよいのかどうか?今でもわかりません。
ラマ チャンドランの本を読んでいます、脳科学の本ですが、読み終えて高次脳機能障害をより深く理解できるようになればと思っています。ラマ チャンドランの考え方は、臨床で患者さんの症状から正常との違いを比較して、我々の脳の働きの仕組みを解明するという手法を取っていることだと思いました。
「些細な事の観察にもとずく。」ということを強調していることに
私はとても共感しています。
学者の中には、人間が目で見たり感じたりすることは不確実で、それを根拠にするのは科学的でないと主張する先生もいます。
何かの測定機器を用いて数値を出さなければ科学的なデーターとは認められない
という考え方です。
しかし、実際の介護現場での些細な事の観察はとても大切だと思います。
些細な事を観察して記録することが問題の解決に結びつくことがあることを介護に携わる人に実感して頂きたいと思います。
いきなり動作訓練に入るのは無理があります。例えば運動麻痺があるのに麻痺の治療をせずにいきなり動作訓練に入って失敗する事が多いです。介護現場の人は運動療法を煙たがる傾向にあります。とても勉強していて理解ある介護士さん達もいらっしゃいますが、まだ改善の余地があるのに自分たちの業務の負担になると感じるスタッフが多々います。機能回復すれば介護負担自体も軽減されるとは感じていないようです。そのような考えの人達は自分達が如何にして負担を減らすかしか考えないので人を物としか扱わないように業務を進めていきます。すると利用者さんはどんどん動けなくなって更に重度な介護が必要になります。自分で自分の首を絞めていることに気づきません。
ご利用者さんによって日常生活動作能力に差があるので一概には言えません。
各ご利用者さんのADLを把握することが重要です。
原則としてタッチはできるだけ柔らかく心掛けます。
皆さんの利用者さんをみていただいたら体の固い人がとても多いことがわかると思います。ご老人なのであたりまえなのですが、そのような方々の体を強くつかむと体が硬くなるのがお分かり頂けると思います。ユマニチュードでも腕を掴まないことを原則にしていると思います。関節拘縮の重度な人は、ほとんどがCRPSを起こしていると思って間違いないです。
暴力をふるい自己、他者を傷つける人でない限り、できるだけゆっくり少しずつ介助するのがよいと思うのですが忙しい皆さんには難しいと思います。しかし介護が困難な人の多くが失認を伴っているので急な動きに怖がる傾向にあります。
利用者さんの更衣、お風呂介助、おむつ交換などには、かなり複雑な作業なのでボディーメカニクスの利用が困難になります。ユマニチュードではどのように対応するかわからないのですが、理学療法ではできるだけ可動域を改善することでおむつ交換、更衣などの介助がしやすくなると思います。
前述のようにご老人は痛みをもっています。そこに痛みを加えるような操作はしてはいけません。ご老人が介護拒否をされている時に粗末に扱うことは火に油を注ぐようなものです。
応用動作の負担を軽減する為には、出来るだけ利用者さんに柔らかく接して拒絶反応を無くすことだと私の経験上から述べさせて頂きました。
BPSDの理解
痴呆が認知症と言い換えられたように、かつての問題行動もBPSDと医療介護では言い換えられています。
認知症の中核症状は記憶、見当識、判断能力が障害されます。
周辺症状 BPSDは暴力行為、情緒不安定、異食、不潔行為、徘徊、無為、自閉、独語などです。
脳の変性 アルツハイマー、ピック病に多く見られます。
脳の変性により人格が変化してしまう時があります。人に対して優しかった人が暴言暴力をふるうようになったり、情緒不安定になる人がいます。
今回の症例は45歳と若いのでBPSDとは関係がないと勘違いされるかもしれません。
我々は疾患別に考える習慣ができているので脳が障害されたときにどのようなことが起こるかという考え方に慣れていません。ほとんどの介護の教科書が疾患別に記載されているからです。
アルツハイマー、ピック病、脳血管性認知症、頭部外傷などいかなる疾患でも、それを司る脳の部位が損傷されれば問題行動BPSDと同じような症状が起きます。
この症例で重要なことは暴力行為、情緒不安定などの世間から見れば性格が悪い、けしからん、人間として失格だと思われるような症状でも対応を工夫することで改善を期待できる可能性があるということです。性格に問題があると差別の対象になることがあります。性格が悪いから、私はこの利用者が嫌いだ。ほんとに困った人だ別の施設に行けばいいのにと思われることも、しばしばです老若男女問わず、介護職はこのような偏見を変えていかなくてはなりません
症例
45歳、バイク事故で頭部を撃ち、硬膜外血種で開頭術を受けた患者さんです。
入院当初は全く起き上がり、座位が全くできず、職員のいうことも全く聞かず、
ベットから転落などを繰り返すので、拘束もされていました。
口頭指示ができず動作訓練がまったくうまくいかなかったので、家族に協力してもらうことにしました。訓練時、家族についてもらい、会話しながら、座位訓練、立位訓練と進めていき平行棒内歩行から病棟で手すりをもって歩行できるまでになりました。
このような人への対応は、家族などと一緒に子供のころ何が得意だったか、好きなものは何か、仕事で大変だったことはどんな事だったか等を聞き出して信頼関係を作りながら動作訓練を進めるのが良いようです。
家族と一緒に昔、楽しかったことを話しながら、座位訓練は話すために座る。話す場所を移動するために立ち上がって歩く練習をする。という具体的な目的を持った進め方が重要です。
この人はまだ、人格の変化が残り、家族のいないときは急に泣いたり、怒り出したりします。機嫌が悪いと職員を怒鳴りつけたり薬、処置を拒否したりします。
認知症の人は短期記憶が衰えても、若い頃の記憶はよく保たれています。
今後も家族と一緒に話しながら、私の臨床経験を聞いてもらったりして、ADL,QOLを向上させ家庭復帰、社会復帰につなげていこうと思っています。
前回、症例で報告した、バイク事故で頭部外傷を起こした患者さんの経過です。
家族に頭部外傷による脳障害の症状である、意識の内容障害を説明しながら、
実際の訓練場面を見学してもらい、意識の内容障害の対応方法を説明しながら
家族に協力してもらうと1か月前はベットから転落していた人が、屋外歩行も
監視下でできるようになりました。脳障害を正しく理解して、適切な対応をすれば
より良い結果が得られる証明だと思います。
傾聴
傾聴と医師の問診との違い
「ベットサイドの神経の見かた」は日本を代表する神経学の教科書です。
その冒頭に病歴のとりかたが記載されています。
いかなる疾患を診断する時も病歴が大切である。病歴を上手に取ることは、疾患の診断を60~70%可能にする。とあります。
問診は、医師のみが行うものではありません。コメディカル、介護スタッフの何気ない通常の会話から、利用者さんの異変に気付いたりすることもあるのでとても重要なものです。
それに対し、傾聴は患者さん、利用者さんとの信頼関係を築くのに使われます。
http://conlabo.jp/active-listening-857
をまとめました。
傾聴とは
英語では、アクティブ リスニング と言われます。
ただ単に、相手の言っていることを聞いて受け止めればいいというものではなく、積極的に関心を持って相手が思っていることまでに注意深く耳を傾けることです。
傾聴で大切なことはテクニックではなく相手を理解しようとする姿勢です。
「この人は自分を理解してくれるな」と思って、人は本音を語ってくれます。
話し手にも聞き手にも、傾聴のメリットがあります。
聞き手にとって一番のメリットは相手を理解できることです。
話し手にとっては、傾聴をしてもらって、話しているうちに自分でも思いがけないことを話してしまって「口に出して初めて自分がそんなことを考えていることに気づいた」という事もあり、考えながら話すことで、考える力が強化され、自ら考え、判断し、納得することができます。
傾聴の本質は「言っている事のみならず、相手が思っていることまでを理解する」ことです。
傾聴の技術
1:ペーシング 相手の話し方、姿勢、視線、心の状態を把握し、それに合わせて話をすることです。話を聞いても相手のペースを乱してしまうと本音を話してもらえません。
2:オウム返し:相手の言ったことを繰り返すことで、しっかり聞いていますよと言うことを話し手に印象付け、安心感を与えることです。
3:パラフレーズ 相手の言ったことを要約したり、言い換えたりします。「あなたのおっしゃったことは、こういうことなのですね」と相手と自分の認識のずれを調整します。
傾聴のポイント
自分の考えを押し付けない
相手の話の内容や考えを否定しない
共感すること 共感は全く同じ意見を持たなくとも、相手はそう思うんだなと感じることです。
傾聴で絶対に抑えておく3つの事
1:先入観を持たない
2:次に自分が言う言葉を考えない
3:判断しない
相手はこう考えているに違いない、相手がこう出たらこう言ってやろう、相手が間違ったことを言ったから直してあげないとなど先読みしない事です。
まとめ
傾聴は治療を目的としていません。結果的に治せることもありますが、相手の症状を軽減しようと誰しもが思います。それより重要なことは相手のことを理解しようとする姿勢です。信頼関係を作り、相手が自分の事を語ることで自分に気づき、その気づきによって、自らを修正する力を引き出すことです。
相手を心から理解したいと思う気持ちが一番大事です。介助者と利用者の信頼関係から、より良い介護が生まれてくると思います。
上記のが一般的な傾聴です。
しかし、うつ等の精神障害があると傾聴が通用しない時があります。
症例です
キャリアウーマンとして会社で働いていた女性で、管理職についていました。ストレスで仕事中意識を失い救急病院に運ばれ、精神科に転院となりました。精神科病院では自分で窓から飛び降り右肘の複雑骨折、骨盤骨折を起こし後遺症が残り、精神障害者手帳、身体障害者手帳の両方を持っていらっしゃいます。うつ傾向がひどく、幻視を訴えます。
うつ的な訴えに対しては傾聴が重要だと思い、訴える症状に対しては、訴えるがままに聞いていました。数週間、訓練の合間に5分ほど症状などを聞くようにしていました。
傾聴しても、うつ的な訴えはひどくなるばかりで、「あの時のことがなければ、もっと別の人生だったのに、こんな体になって、こんなに苦しいなら、このまま、あの世に行ってしまいたい。」など、どんどんネガティブな訴えはひどくなるばかりでした。どんな症状かを聞いて、それは苦しいですね等の共感するだけではダメなケースでした。思い切って「もう症状のことは聞きません。」「過去の楽しかったこと、学生時代の話や、音楽が好きでコンサートに行った時の事、スポーツ、特にテニスが好きだったのでテニス部で楽しかった話をしましょうと。」傾聴はやめて、病気になる前の楽しかったことを話してもらうことにしました。その結果
骨盤骨折があり、あまり歩きたがらなかったのですが、表情が明るくなり、自分から歩行器でトイレなども行きたいと生活にも前向きになり、病棟で自分から歩行訓練もするようになりました。他の患者さんとも会話をするようになり。もうすぐ病棟カンファレンスを行い看護師、病棟スタッフにリハビリの経過を報告し、このようなタイプには,あまり症状を深く効かない、うつが起こった時は学生時代の楽しかったことなどに話題を変えるように病棟スタッフには申送りすることにしています。
幻聴幻覚のある人に傾聴するとその症状をかえって意識させてしまうことがあるようだと私は考えています。過去のつらいことが脳に記憶されていてそれが思い出されるとPTSDを余計強くしてしまうのではないかと推測しています。
病気があると、幻聴幻覚などに共感してしまうと、余計症状を悪化させるという典型的な例です。
冒頭に述べたように、傾聴は治療技術ではないということです。
症例のように、傾聴することで症状をかえって悪化させてしまった。ということも重要な所見です。傾聴してダメな場合は別の手を考えて改善するかどうかを試みることは大事なことです。主治医に報告して指示を得ることも忘れてはならないことです。
動作訓練です
リハビリテーション医学は、救命、延命の状態から改善しADLの向上が期待できないと効果を発揮しません。移乗動作と違うところは、動作を獲得し自立するまでを目標とします。
基本動作訓練でも疾患を考慮しなくてはならないことは言うまでもありません。
介護現場の利用者さんが自立できないのは、ほとんどが、認知症を持っています。
リハビリテーション医学全書7「運動療法 第三版」の第7章「脳卒中に対する運動療法」の中で自立度の低い脳卒中では高次脳機能障害(失行、失認)が最大の因子であるとあります。この章の執筆者の先生には怒られそうなのですが、私個人としては臨床で精神病患者、認知症患者さんと接していて、この患者さんは明らかな脳卒中がないのだが、失行、失認を伴っているのではないかと思うことがあります。
そのような患者さんに、リハビリテーション医学全書7「運動療法 第三版」第7章
「脳卒中に対する運動療法」のように、
1 無意識の動作から意識化への動作に誘導に誘導する
努力をさせてあれをしろこれをしろと言わない。
2 病前の動作習慣に従う
病気になる前どのような立ち上がり方、歩行の仕方をしていたかなど、家族から聞く、
または本人がやりやすい方法で行ってもらう。この時もこの方法がいいよと指図しない。
3 動的訓練中心
座るための坐位訓練ではなく、立つための立位訓練ではなく、
動作を分断して訓練をするのではなく、
起き上がりから立位までを一連の動作として学習させることが大事。
4 できない動作は介助
どうしてもできないものは必要最低限の介助を行うとあります。
以上が失行タイプの訓練で成書ではもっと詳しく書いています。失認タイプの訓練は失行タイプの訓練を優先し、それが進めば失認にアプローチするとあります。
つまり訓練のための訓練ではなく、いかに苦痛なく動作を誘導できるかです。
高次脳機能障害の失行失認を失行タイプ、失認タイプに分けて訓練方法を分けているのですが、ここで皆さんに説明するのはとても難しいです。皆さんは以上の説明では分からない方が多いと思います。成書には詳細に記載されていて、そちらを読んでくださいとなってしまうのですが、
明らかな脳卒中がない、精神病患者さん認知症患者さんで動作障害がある人に上記の方法を試してみると歩行ができるようになったり、寝たきりの人が起き上がれるようになったりする患者さんがかなりいました。もちろん無効な場合もありましたが。本を書かれた先生には解釈が間違っていると怒られそうなのですが、認知症の人でも失行、失認を伴っている人がかなりいると確信しています。
これは介護現場でも使えそうと思います。
「認知症」を考えたいと思います。今回は運動療法には触れません。
皆さんの利用者さんのほとんどの方です。
認知症については、「介護疾患」をご参照ください。
リハビリテーションの阻害因子は認知症です。認知症があると、患者教育が無効になります。
例えば、筋力強化をして歩行機能を改善しようとするとき、筋力強化の意味が理解できなければ訓練のしようがないからです。私は長谷川式認知症スケール を多用します。非常によくできたテストで、短時間ででき、どれくらいの知的能力があるかが測定できます。
長谷川式認知症スケールは一見簡単なのですが、試していって質問するタイミング、認知症の方の反応を捉えることに慣れないとその意味が理解できません。
しかし、分かってくると人間の思考というものがどのようなものか、時間、場所、長期、短期記憶、計算能力などの認知機能をひっくるめて人の認知機能が成り立っています。
認知症の人は上記の部分のどれかが欠落しています。色々な人に根気強く試してみてください。
それにより訓練の方法、コミュニケーションの方法を考え、運動学習がどれくらいインプットできるかを予想します。
訓練室で歩行ができるようになっても、認知症があると病棟で徘徊を止められず、院内ADLが上がらないことが多いです。そこで認知症そのものを改善させる方法はないか考えています。
思いつきなのですが、認知症患者さんの知的能力で最後まで保たれているのが昔、苦労したころの記憶です。男の人なら、仕事のこと、女の人だったら家事、子育てなどの記憶です。
この話題から入って、他の知的能力、時間、場所などの認知機能、長期、短期記憶などが改善できないか考えてます。
認知症そのものの改善ができれば、介護の負担を大きく軽減できるのではないかと思います。
単なる思い付きの段階で科学的根拠もないのですが、皆さんは利用者さんと接していて、どのようにお感じになるでしょうか。現場の方のご意見をお聞かせください。
フェイスブック意見交換をしてから、ユマニチュードはどうかと考え調べてまとめてみました。
フランス生まれの認知症のケアの手法です。
見る、話す、触れる、立つというコミュニケーションの4つの柱からなっています。
この4つを組み合わせ、
「見つめながら会話、位置へ移動する」「アイコンタクトが成立したら2秒以内に話しかける」といった150の手法があります。
見る
認知症になると視野が狭くなあるため、患者さんの視覚に入り、アイコンタクトをして、「私はあなたの味方です。」というメッセージを伝えます。
話しかける
たとえ認知症患者さんが反応しなくても、積極的に話しかけます。このときもアイコンタクトが必要です。認知症患者さんが無反応、正しい回答がなくとも積極的話し方に効果があります。相手がこちらの意図しない反応をしても、話しかけにより反応があったのですから成功といえます。
触れる
そっと手で触れて動作を誘導することがとても大事です。
触れるときは話しかけながら、そっと患者さんの動作を誘導するように触ります。
決してつかんだり、荒っぽく無理やり動作を強いるようなことをしてはなりません。
この時もアイコンタクトを忘れてはなりません。
立つ
アイコンタクトができ、話しかけながら、そっと手で触れて動作を誘導できたなら、ベットから起こして立たせます。
以上がユマニチュードの基本なのですが、患者さん、利用者さんと接する立場なら当然な行為であって特別な事ではないような気がします。
私はホームページを読んで、まとめただけなので、ユマニチュードを研究している人にとってはそんな簡単なものではないと怒られそうなのですが。
今の業務の参考になりそうですね。
介護現場での訓練
介護は辰巳さんの言葉を借りるなら、介護は医療福祉業なので、訪問リハビリ、特養、老健施設、デイサービスでも陳旧性の運動障害に対する運動療法の重要性は変わらないと思います。しかし、介護保険事業所ではセラピストが力を発揮できる状態ではないです。
私は特養で、機能訓練加算に関する書類を作らされましたが、個別機能訓練加算では医師の診断に基づいた処方が全くなされない事が問題です セラピストの判断にすべて任されてしまいます。
介護を必要とするご老人のほとんどが陳旧性の運動障害を持っていますが陳旧性の運動器疾患はほとんどが無視されてしまいます。逆に言えばとても分かりずらい、PT・OTも評価できないです。 介護を必要とするご老人の状態は沢山の陳旧性の障害が重なると疾患を見つけにくくなることです。また見つけても改善の方法がないので放置される事がほとんどです。
しかし、このような状況でも運動の疾患を持った利用者さんを運動療法によって運動系の機能障害を軽減できることは重要で必要なことです。出来るだけよいコンディションで集団体操、レクレーションを行う方が安全だからです。
もう一つの問題は、これを介護職の人が余り理解してくれないという事実です。私達は
おむつ替えや、食事介助、更衣、お風呂の世話で忙しいのに、PT・OTは何の役にも立ってくれないという気持があるのではないでしょうか。
陳旧性の運動器疾患に対応するには、かなりの臨床経験と疾患に対する知識が必要になります。それができるPT・OTはほとんどいません、またそれができるPT・OTを育てる環境にほとんどの介護保険施設がないと思います。経営する側とコストの問題もあるかも知れません。
このような問題は一人のセラピストの力でなんとかできることではありません。
介護職全体の待遇が悪く離職者が後を絶たない状況では、陳旧性の運動系の障害を
改善して、利用者さんのADLを向上させてセラピスト介護職ともにやりがいを感じ、業務の負担を減らしていく方向に持っていくのは困難かもしれません。
各施設でのセラピストと介護職の関係の問題は様々で上記の問題だけではないと思います。
一人一人の職員が問題を冷静に分析し、解決法を少しでも前に進めていく努力が重要ではないでしょうか。
理学療法士の介護現場での訓練は理屈っぽいとのご意見もあるようなので、これについて考えたいと思います。
このホームページでも、運動学について説明しています。
レクレーションなどする時に運動学なんて考えてないで楽しくやった方が利用者さんの受けがいいと思う方も沢山いらっしゃると思います。
私もデイサービスで働いたことがあります。
集団体操を行いましたがほとんどいい結果は得られませんでした。
この時の教訓としては、利用者さんと近い介護士さんの方が上手にレクレーションを行い集団体操を行います。
しかし、理学療法士の技術を介護現場で活かしきれていない面があります。
理学療法技術は利用者さんが運動系の障害を持っている時にそれを軽減する効果があります。これを行う環境にない介護現場がほとんどだと思います。
運動系の障害を持つ利用者さんをより運動しやすい状態に理学療法士がして、その後にレクレーションを行うとより良い効果が期待できるのではないでしょうか。
そのためには介護士さんも運動学の知識は持っておいた方が良いと思います。
私は今の職場で一度も、看護師さんやヘルパーさんに「この体操をしてください。」と言ったことはありません。今後もそのつもりはありません。
理学療法士と介護士さんの役割は分担して、お互いの守備範囲を確認して介護現場を動かして行った方が良いと思います。