BPSDの理解

痴呆が認知症と言い換えられたように、かつての問題行動もBPSDと医療介護では言い換えられています。

認知症の中核症状は記憶、見当識、判断能力が障害されます。

周辺症状 BPSDは暴力行為、情緒不安定、異食、不潔行為、徘徊、無為、自閉、独語などです。

脳の変性 アルツハイマー、ピック病に多く見られます。

脳の変性により人格が変化してしまう時があります。人に対して優しかった人が暴言暴力をふるうようになったり、情緒不安定になる人がいます。

今回の症例は45歳と若いのでBPSDとは関係がないと勘違いされるかもしれません。

我々は疾患別に考える習慣ができているので脳が障害されたときにどのようなことが起こるかという考え方に慣れていません。ほとんどの介護の教科書が疾患別に記載されているからです。

アルツハイマー、ピック病、脳血管性認知症、頭部外傷などいかなる疾患でも、それを司る脳の部位が損傷されれば問題行動BPSDと同じような症状が起きます。

この症例で重要なことは暴力行為、情緒不安定などの世間から見れば性格が悪い、けしからん、人間として失格だと思われるような症状でも対応を工夫することで改善を期待できる可能性があるということです。性格に問題があると差別の対象になることがあります。性格が悪いから、私はこの利用者が嫌いだ。ほんとに困った人だ別の施設に行けばいいのにと思われることも、しばしばです老若男女問わず、介護職はこのような偏見を変えていかなくてはなりません

 

症例

45歳、バイク事故で頭部を撃ち、硬膜外血種で開頭術を受けた患者さんです。

入院当初は全く起き上がり、座位が全くできず、職員のいうことも全く聞かず、

ベットから転落などを繰り返すので、拘束もされていました。

口頭指示ができず動作訓練がまったくうまくいかなかったので、家族に協力してもらうことにしました。訓練時、家族についてもらい、会話しながら、座位訓練、立位訓練と進めていき平行棒内歩行から病棟で手すりをもって歩行できるまでになりました。

このような人への対応は、家族などと一緒に子供のころ何が得意だったか、好きなものは何か、仕事で大変だったことはどんな事だったか等を聞き出して信頼関係を作りながら動作訓練を進めるのが良いようです。

家族と一緒に昔、楽しかったことを話しながら、座位訓練は話すために座る。話す場所を移動するために立ち上がって歩く練習をする。という具体的な目的を持った進め方が重要です。

この人はまだ、人格の変化が残り、家族のいないときは急に泣いたり、怒り出したりします。機嫌が悪いと職員を怒鳴りつけたり薬、処置を拒否したりします。

 

認知症の人は短期記憶が衰えても、若い頃の記憶はよく保たれています。

今後も家族と一緒に話しながら、私の臨床経験を聞いてもらったりして、ADL,QOLを向上させ家庭復帰、社会復帰につなげていこうと思っています。

 

傾聴

 

傾聴と医師の問診との違い

「ベットサイドの神経の見かた」は日本を代表する神経学の教科書です。

その冒頭に病歴のとりかたが記載されています。

いかなる疾患を診断する時も病歴が大切である。病歴を上手に取ることは、疾患の診断を60~70%可能にする。とあります。

問診は、医師のみが行うものではありません。コメディカル、介護スタッフの何気ない通常の会話から、利用者さんの異変に気付いたりすることもあるのでとても重要なものです。

 

それに対し、傾聴は患者さん、利用者さんとの信頼関係を築くのに使われます。

http://conlabo.jp/active-listening-857

をまとめました。

 

傾聴とは

英語では、アクティブ リスニング と言われます。

ただ単に、相手の言っていることを聞いて受け止めればいいというものではなく、積極的に関心を持って相手が思っていることまでに注意深く耳を傾けることです。

傾聴で大切なことはテクニックではなく相手を理解しようとする姿勢です。

「この人は自分を理解してくれるな」と思って、人は本音を語ってくれます。

 

話し手にも聞き手にも、傾聴のメリットがあります。

聞き手にとって一番のメリットは相手を理解できることです。

話し手にとっては、傾聴をしてもらって、話しているうちに自分でも思いがけないことを話してしまって「口に出して初めて自分がそんなことを考えていることに気づいた」という事もあり、考えながら話すことで、考える力が強化され、自ら考え、判断し、納得することができます。

 

傾聴の本質は「言っている事のみならず、相手が思っていることまでを理解する」ことです。

 

傾聴の技術

 

1:ペーシング 相手の話し方、姿勢、視線、心の状態を把握し、それに合わせて話をすることです。話を聞いても相手のペースを乱してしまうと本音を話してもらえません。

 

2:オウム返し:相手の言ったことを繰り返すことで、しっかり聞いていますよと言うことを話し手に印象付け、安心感を与えることです。

 

3:パラフレーズ 相手の言ったことを要約したり、言い換えたりします。「あなたのおっしゃったことは、こういうことなのですね」と相手と自分の認識のずれを調整します。

 

傾聴のポイント

自分の考えを押し付けない

相手の話の内容や考えを否定しない

共感すること 共感は全く同じ意見を持たなくとも、相手はそう思うんだなと感じることです。

 

傾聴で絶対に抑えておく3つの事

1:先入観を持たない

2:次に自分が言う言葉を考えない

3:判断しない

相手はこう考えているに違いない、相手がこう出たらこう言ってやろう、相手が間違ったことを言ったから直してあげないとなど先読みしない事です。

 

まとめ

傾聴は治療を目的としていません。結果的に治せることもありますが、相手の症状を軽減しようと誰しもが思います。それより重要なことは相手のことを理解しようとする姿勢です。信頼関係を作り、相手が自分の事を語ることで自分に気づき、その気づきによって、自らを修正する力を引き出すことです。

相手を心から理解したいと思う気持ちが一番大事です。介助者と利用者の信頼関係から、より良い介護が生まれてくると思います。

 

上記のが一般的な傾聴です。

しかし、うつ等の精神障害があると傾聴が通用しない時があります。

 

症例です

キャリアウーマンとして会社で働いていた女性で、管理職についていました。ストレスで仕事中意識を失い救急病院に運ばれ、精神科に転院となりました。精神科病院では自分で窓から飛び降り右肘の複雑骨折、骨盤骨折を起こし後遺症が残り、精神障害者手帳、身体障害者手帳の両方を持っていらっしゃいます。うつ傾向がひどく、幻視を訴えます。

うつ的な訴えに対しては傾聴が重要だと思い、訴える症状に対しては、訴えるがままに聞いていました。数週間、訓練の合間に5分ほど症状などを聞くようにしていました。

傾聴しても、うつ的な訴えはひどくなるばかりで、「あの時のことがなければ、もっと別の人生だったのに、こんな体になって、こんなに苦しいなら、このまま、あの世に行ってしまいたい。」など、どんどんネガティブな訴えはひどくなるばかりでした。どんな症状かを聞いて、それは苦しいですね等の共感するだけではダメなケースでした。思い切って「もう症状のことは聞きません。」「過去の楽しかったこと、学生時代の話や、音楽が好きでコンサートに行った時の事、スポーツ、特にテニスが好きだったのでテニス部で楽しかった話をしましょうと。」傾聴はやめて、病気になる前の楽しかったことを話してもらうことにしました。その結果

骨盤骨折があり、あまり歩きたがらなかったのですが、表情が明るくなり、自分から歩行器でトイレなども行きたいと生活にも前向きになり、病棟で自分から歩行訓練もするようになりました。他の患者さんとも会話をするようになり。もうすぐ病棟カンファレンスを行い看護師、病棟スタッフにリハビリの経過を報告し、このようなタイプには,あまり症状を深く効かない、うつが起こった時は学生時代の楽しかったことなどに話題を変えるように病棟スタッフには申送りすることにしています。

幻聴幻覚のある人に傾聴するとその症状をかえって意識させてしまうことがあるようだと私は考えています。過去のつらいことが脳に記憶されていてそれが思い出されるとPTSDを余計強くしてしまうのではないかと推測しています。

 

病気があると、幻聴幻覚などに共感してしまうと、余計症状を悪化させるという典型的な例です。

冒頭に述べたように、傾聴は治療技術ではないということです。

症例のように、傾聴することで症状をかえって悪化させてしまった。ということも重要な所見です。傾聴してダメな場合は別の手を考えて改善するかどうかを試みることは大事なことです。主治医に報告して指示を得ることも忘れてはならないことです。

  • Facebook Social Icon
  • Twitter Social Icon
  • Google+ Social Icon
  • YouTube Social  Icon
  • Pinterest Social Icon
  • Instagram Social Icon
This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now